書評『気 流れる身体』

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書評『気 流れる身体』

鍼灸業界の方向けブログ

2019/04/18 書評『気 流れる身体』

表参道鍼灸マッサージ治療室自然なからだの手塚です。

 

鍼灸、とりわけ伝統的な鍼灸を行っている先生は、少なからず「気」というものを意識した治療を行っています

 

その「気」というものを意識した治療を説明する時に、日本では欠かせない本があります。

 

それが石田秀実先生の『気 流れる身体』という本です。

 

 

 

実はこの本、私が学生時代に購入し、それ以来ずっと本棚の奥にしまわれていて、一回もちゃんと読んだことがない本でした。

 

私が会長を勤めさせて頂いている新医協東京支部鍼灸部会で昨年開催した全国研究集会という会があります。

そこで故石田秀実先生の追悼企画を行いました。

 

そのプログラムの1つが、石田秀実先生の著書の書評を数人の先生で行うというものです。

 

一度ちゃんと読んでみたいと思っていた私は、この本の書評を担当することにし発表を行いました。

 

今回初めて最初から最後まで読み、思わず泣いてしまいました。非常に感銘を受けて、「これはぜひ多くの人に読んで欲しい!」と思ったので、新医協に了承を得て、HPに掲載させて頂くことにしました。

 

 

書評『気 流れる身体』

 

1.はじめに

日本鍼灸で「気」について語る時、石田秀実先生を抜きには語ることができない。しかし、最近鍼灸の勉強を始めた人は、石田秀実先生の名前を知らない人も多い。また名前を知っていて、本を持っている人でも、最後まで読破した人は少ないのではないか。

 

私自身も学生時代にこの『気 流れる身体』を中古で購入し、数ページ読んだだけで本棚の奥にしまってしまった。論文や授業で気を説明しなければならない時にたまに取り出すが、拾い読みするだけで、通読したことは一度もない。私の周りの鍼灸師仲間も、聞いてみると、最後まで読んだ人はほとんどいなかった。哲学的な用語や難解な表現が多く、何かすごいことが書いてあることはヒシヒシと伝わってくるのだが、ページをめくるのがこんなに重い本も珍しい。

 

昨年、新医協全国研究集会で、石田秀実先生の追悼企画を行った。そこで何人かで石田先生の本の書評を発表することになった。発表者の一人に選ばれた私は、一度ちゃんと読んでみたかった『気 流れる身体』をあえて選んでみた。締め切りを決めて、読まざるを得なくしたのだ。そんな状況になっても本を読み進めるのがとても辛かった。読み進めては意味が分からなくなって前に戻り、そしてまた進めるというように遅々として進まない。

 

結局苦しみに苦しんだ結果、発表前日の朝、治療院の仕事が始まる直前にカフェでやっと読了した。その最後のページを読んでいる時に、あまりに感動して、人目を気にせず泣いてしまった。「なんて良い本なんだろう」「鍼灸の仕事をしていて本当に良かった」「もっと早く読んでおけば良かった」と心から思えたのだ。気という視点で身体をみて、病と向き合うこの鍼灸医学の素晴らしさを実感することができたのだ。

 

 

2.『気 流れる身体』の内容

『気 流れる身体』は1987年に発行された石田秀実先生の初の本で、平河出版から発売された。石田先生の本の中では比較的平易な文章で書かれていると言われているが、私にとっては十分に難しい。

 

この本のテーマは「道教と伝統医学を通して人の身体の見方を考察する」というものだ。

 

第一章「流れる身体」では、気や経絡、経筋、臓腑などの伝統医学の身体観についての説明と、それが道教とどのように関連しているかが説明されている。

 

第二章「広がり充ちる「こころ」」では、道教や伝統医学では、こころをどのようにとらえているか、精神とは、五神の意味などが説明され、これらを把握したうえで、こころの持ち方をどのようにすれば良いかが書かれている。

 

第三章「集合としての自己」では、自己とは何か、道教でいう“在思”という考え方とは、そして、それらを踏まえての身体技法を説明している。

 

第四章「流れの創造と身体錬金術」では、営気・衛気などの恒常的な気の流れとは別に、自分の身体を意識的に使うことで気をめぐらす方法、そして理想的な身体をつくる方法が説明されている。

 

第五章「中国的二元論」では、陰陽の概念、そして部分と全体という考え方について説明されている。

 

 

3.『気 流れる身体』の魅力

ここからはネタバレが大いにあるので、読みたくない人は読み飛ばして欲しい。しかし、ある程度ネタバレがあるぐらいでないと、読み進めるのが難しいので、あえて内容部分まで書いていきたいと思う。

 

私たちは伝統医学(以下私たちには東洋医学の方が馴染みやすいので、東洋医学と表記する)を『東洋医学概論』の教科書で学ぶ。そして気や経絡経穴、臓腑、陰陽について、それぞれ独立した章で学ぶことになる。しかし、この本ではそれぞれがどのように関係しているのかを中心に説明する。なぜそうするかというと、東洋医学の身体観は、解剖学的に個々の臓器を見るのではなく、生きた身体を一つの統一体としてとらえるからだ。それぞれが独立しているのではなく、連動して動いているとしてとらえる。東洋医学は入れ物である臓器や消化管は重要ではあるが、医療の主たる目標とはしない。その入れ物の中を流れるものこそが重要であり、それが人の身体にとって本質的なものなのだと説く。その流れるものがどう動くかを経絡や臓腑の関連性の中で理解していくことが重要なのだ。

 

治療に関しても、この本の言葉を借りれば

 

<腸・胃や脳など、一見固定的な「物」についての治療と考えられそうなものにおいても、重要なのは、中の穀気(飲食物の気)の除去によるルートの開通であり、脳を貯蔵庫として流動する精髄の状態である。>

 

と説明されている。

 

肝虚と証を立てたとすると、肝という臓器を補えば東洋医学的な治療をしていると思ってしまう。しかしそれだと、西洋医学的に「悪い臓器を直接治療する」のと変わらない。本来の東洋医学の身体観からすれば、身体全体のバランスを考え、肝という臓腑へのルートをしっかり通すことによって肝を補うのだ。だからこそ、『難経』六十九難の治療は「その母を補う」のである。

 

このように、『気 流れる身体』の魅力の一つは、東洋医学的な考え方をもう一度整理して復習することができることだ。そして臨床をしている人にしか分からないような身体のとらえ方で書かれており、私が師と仰ぐ先生は「石田先生は自分で鍼灸治療をしてるんじゃないかしら」とよく言っていた。

 

『気 流れる身体』はさらに「こころ」についても深く研究されている。『東洋医学概論』では「こころ」については殆ど語られることはない。しかし、この本では「こころ」とは何か、「こころ」と身体の関係性、そして「こころ」の使い方などが書かれている。

 

本の中では「こころ」について以下のように書かれている。

 

< 医経の考え方では、感情は「こころ」を内在させている気の状態の表現として起こる。その意味からいえば、感情とは身体の状態の表出である。流れる身体の状態が、そこに内在する「こころ」を動かすのだ。・・・「こころ」そのものではなく、「こころ」を内在させている気のバランス失調に、感情の起伏の原因が求められていることに注意したい。身体技法(とりわけ呼吸)が、ダイレクトに感情をコントロールしうることになるからだ。>

 

心身一如という言葉はもちろん習ってはいる。しかし、それが気や臓腑経絡とどう関わっているかについては習わない。この本は私たち鍼灸師が、「こころ」に対してどうアプローチしたら良いかが明確に示されている。この辺の詳しいことは、ぜひ本文を読んで頂きたい。

 

そしてこの本の最終章では陰陽論が語られる。ここでは、物事をただ2つに分類するというだけでなく、部分と全体、自己と他者、自然と人間の関係性も語られる。そして自分という人間が宇宙の一部であり、自然の一部であるということが分かり、大自然の中に自分が溶け込むような感覚になる。本のあとがきには以下のように書かれている。

 

< 私たちの本質は川や大地の自然と同じ「流れ」である >

 

 

4.鍼灸業界への影響

鍼灸ジャーナリストの松田博公先生が書かれた石田先生の追悼文に次のようなことが書かれている。

 

―――

石田秀実さんの思い出は、故井上雅文先生の思い出に繋がる。1980年代までの井上先生は、経絡治療家の多くがそうであるように、「気」について語ることがなかった。その先生が、90年代に入ると、「気」を語るようになる。あるとき、わたしは問いかけてみた。

「気を口にされるようになったのは、石田さんの著書『気・流れる身体』に出逢ってからですか」

井上先生は、見透かされたように、少し驚いた顔をして、「そうなんですよ」とおっしゃった。

―――週刊あはきワールド 2017年12月6日号より引用

 

治療する際に、手先に気を感じることについては書かれている本はある。しかし身体を本来の意味での「気」という概念でとらえて、身体全体の動きを「気」で説明している本はあまりない。この本では、それが論理的にまとめられており、今までの自分の臨床を気で説明できるようになる。なぜここに刺すと身体が変化するのか、感覚的には分かっていても説明できないことは多々ある。そんな時にこの本は有効な参考書となる。そして理論的に考えることができると、また新たな治療のイマジネーションも湧いてくる。

 

だからこそ、鍼灸の初心者よりも、ある程度臨床経験を積んでから読んだ方が、より楽しめる本だ。もし本棚にこの本が眠っていたら、ぜひ取り出して読んでみて欲しい。ちょっと、いやかなり読みにくい本だが、我慢しても読む価値は大いにある本だ。実は私は他にもまだ石田先生の読んでいない本が本棚に数冊ある。これを良いきっかけにして、眠っている本をまずは取り出して、頑張って、かじりついて読んでみたいと思う。

 

 

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